

認定理学療法士を取得しようか迷っています。
新制度になって取得が難しくなったし、維持も大変そう。
周りの人達が言うように、メリットもあまりないのかな。
新制度が始まったことで、認定理学療法士の取得要件が難しくなりましたね。
確かに、メリットがなければ時間もお金もかけて取得しようとは思えないでしょう。
旧制度で認定理学療法士を取得し、5年後には更新をしようと考えている筆者が、そのメリットを解説します。

日本理学療法士協会では、2022年4月より『新生涯学習制度』が開始されました。
この『新生涯学習制度』では、『登録理学療法士』が新設され、これまであった『認定理学療法士』と『専門理学療法士』は『登録理学療法士』の取得を前提とした上位資格に位置づけられました。
つまり、『認定理学療法士』や『専門理学療法士』を取得・維持するためには、同時に『登録理学療法士』を取得・維持しなければならず、これまで以上に難易度が高くなったと言えます。
そんな新制度に移行されたいま、取得や更新を迷う理学療法士は多いのではないでしょうか。
迷うということは、メリットとデメリットを天秤にかけているということ。
今回は、『認定理学療法士』を旧制度で取得し、5年後には更新する方向で検討している筆者が考える、『認定理学療法士』のメリットを紹介していきます。
こんな方にオススメ
- 『認定理学療法士』を取得するかどうか迷っている
- 旧制度で取得した『認定理学療法士』を更新するか迷っている
- 『認定理学療法士』取得のメリット・デメリットを知りたい
- ちまたで見かける『認定理学療法士』へのネガキャンを信じて良いのかわからない
この記事を書いた人

経歴
4年生専門学校卒業した後、回復期病棟を有する総合病院に入職。
回復期病棟、一般病棟、療養病床を兼務。
併設されたデイケアでの勤務を経て、急性期病院へ転職。
その後、現職である訪問看護ステーションへ転職し、勤務しながら大学院(修士課程)へ進学。
先日、同訪問看護ステーションでの勤務を継続しながら、公認心理師試験(国家試験)に合格。登録申請中。
所有資格
- 理学療法士(登録理学療法士/脳卒中認定理学療法士)
- 地域ケア会議推進リーダー
- 介護予防推進リーダー
- フレイル対策推進マネジャー
- 福祉住環境コーディネーター2級
- 修士
- 第5回公認心理師試験合格(登録申請中)
その他
- 論文執筆・掲載経験あり
- 学会発表多数
- ツイッターフォロワー数 2,899人(2022.9.15現在)
『認定理学療法士』とは
『認定理学療法士』とは、日本理学療法士協会による認定制度で、より高い専門性を備えることを目的としたものです。
『専門理学療法士』とともに、より専門性の高い臨床技能を有するスペシャリストを育成するプログラムであるとされます。
『認定理学療法士』はその専門分野ごとに細かく分けられ、『脳卒中認定理学療法士』や『運動器認定理学療法士』など、21の専門分野に分けられています。
また、新制度に移行されて間もない2022年6月1日時点のデータでは、日本理学療法士協会の総会員数133,990人に対し、『認定理学療法士』の取得者は14,594人と、1割程度の会員しか保有していない資格ということになります。
▼認定理学療法士・専門理学療法士について詳しくはこちら▼
『認定理学療法士』取得のメリット
ここからが本題です。
『認定理学療法士』取得のメリットを紹介していこうと思います。
『認定理学療法士』についてよく見かけるメリットとしては、次のようなものが言われます。
よく見る取得のメリット
- 取得を目指すこと・取得することで、モチベーションにつながる
- 取得までの勉強が臨床に有益
- 転職に役立つ
どれも「確かに」と思う部分ではあり、どれもこれも『認定理学療法士』を取得するメリットだと思います。
ただ、これと同じことを言ってもつまらないですよね。
違うメリットを考えているからこそ、いまこの記事を書いています。
私の考えている『認定理学療法士』のメリットを紹介・解説する前に、上の【この記事を書いた人】の項目は読んでいただけたでしょうか?
あえてしつこいくらいに経歴と資格を書いてみたのですが、読者さんの中には私がなんだかすごい人のように思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
ここに書かれた経歴や実績が本当かどうかなどわからないのに(書いたのは本当のことですが)。
もしかすると、誰が書いた記事なのかが書かれていなければ、ここまで読み進めることなく離脱された方もいるかもしれません。
一人でも【この記事を書いた人】を読んで私のことを「なんとなく信頼できそう」「なんだかすごい人みたい」と思ってくれた方がいたとすると、戦略は大成功です。
まわりくどいですね。
つまり、私の考える『認定理学療法士』を取得する最大のメリットは、こちらです。
私の考える取得のメリット
- なんだかすごそうに見える
- 一度取得した資格は手放したくなくなる
この2つです。
「くだらない」と思った方、ごめんなさい。
けれど、ちゃんとした理由・根拠があるのです。
もう少し読み進めていただけると幸いです。
人は資格で錯覚を起こす
人は、資格や肩書きを見ると、その人に対する認識に錯覚を起こします。
このことから説明していきます。
錯覚資産とハロー効果
『錯覚資産』という言葉をご存知でしょうか。
ふろむださんという方の造語で、著書で次のように説明されています。
「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」は、一種の資産として機能するということだ。本書では、これを「錯覚資産」と呼ぶ。
ふろむだ: 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている
これ、ふろむださんも著書で説明されているように、心理学用語で言うハロー効果です。
ハロー効果とは、対象となる人の優れた側面を見ると、他の側面も優れているように思って(感じて)しまうものです。
私の経歴や資格なんかを見ても、冷静に考えれば大したことはありません。
色々な資格を持っていたり、大学院まで修了していたりするので、色々と勉強しているということは認めていただけるかとは思いますが、それがこの記事の信頼性に繋がっているかというと、正直関係ないと思います。
それでも、【この記事を書いた人】によってこの記事を「読んでみよう」と思える方はいるはず。
これこそが「錯覚資産」であり、「ハロー効果」です。
人は簡単に錯覚を起こし、悪い言い方をすれば簡単に騙されるのです。
資格は使い方次第
結局のところ、資格というのは持っているだけ・取得しただけでは何の意味もありません。
取得した資格は、どうやって使うかが何よりも大切なのです。
例えば、この記事を読んでくださっている大半の方は理学療法士の資格を有しているのではないでしょうか。
この理学療法士という資格も、名称独占に過ぎないことは周知の事実でしょう。
つまり、「理学療法士です」と言えるというだけの資格なわけです。
仮に病院や訪問系の事業所、介護保険領域の施設などに勤務していなければ、理学療法士として保険請求したりはできないわけです。
自費のサービスを提供している理学療法士であれば、理学療法士を名乗ることで医師(主治医)の信用を得ることができ、指示書を書いてもらえていると言えるでしょう。
結局、理学療法士の資格ですら使い方を誤ると全く意味のないものになってしまいます。
今回テーマとしている『認定理学療法士』も同じことが言えるのです。
自分に向けたメリット
上に紹介したのは、対外的なメリットでした。
もう一つ挙げていた、「一度取得した資格は手放したくなくなる」について解説していきます。
人は、自身の保有しているモノに対して高い価値を持つという性質があります。
そして、高い価値を持つものを所有しているということは、それを手放すことに恐怖心や抵抗を感じやすくなるということです。
例えば、ツイッターなどで『認定理学療法士』の更新を諦めた方のツイートを探してみてください。
内容が内容なので引用するのは控えますが、
「認定理学療法士を更新しないことを決めた」
「認定理学療法士を手放すことを決意した」
というような言い方をされている場合が多いのではないでしょうか。
そう、一度手に入れた資格は、手放すのに決意や決心が必要なのです。
保有効果とは
このように、人は一度手にしたモノ、自身の保有しているモノに対して高い価値を感じ、手放すことに恐怖感や抵抗を感じます。
このことを『保有効果』と呼んでいます。
これは行動経済学で用いられることの多い概念ですが、マーケティングやセールスなんかの場面で用いられることが多いです(知らないとカモにされてしまいます)。
高齢者が運転免許の返納をする際なんかも、この『保有効果』が働き、本人が運転することに恐怖や不安を感じている場合であっても、免許の返納には抵抗したりします。
これは人間という生物が持つ認知の特性上の問題なので、意識していなければエラーを起こしてしまうようなものです。
コンピュータやプログラムで言うバグみたいなものですね。
そんな『保有効果』ですが、これも使い方次第で有効利用できると考えています。
自分自身に「手放したくない」と思わせる
そもそも、『認定理学療法士』の取得を考える・検討する方というのは、ある程度向上心や向学心がある方だと思います。
初めから興味もなければ調べたりしないし、こんな記事も読んだりしませんよね。
そういった方であれば、『認定理学療法士」の資格を取得することで、更なる勉強・学習の継続へのモチベーションが多いに得られると考えられます。
どんなに向上心や勉学心が強い方であっても、モチベーションが低下する時期や、休みたくなる時期、揺れ動く時期というのはあるでしょう。
完全に休憩モードに傾いてしまえば仕方がないですが、揺れ動いているという状態であれば、この『保有効果』が利用可能です。
つまり、自分自身に「『認定理学療法士』の資格を手放したくない」と思わせて、勉強へのモチベーションを高めるということです。
はじめに挙げた一般的なメリットにも、勉強するモチベーションを高めるというのがありましたが、保有効果を利用することで、資格取得後も勉強や学習のモチベーションを高め維持することができるということですね。
これが私の考える、『認定理学療法士』取得のもう一つのメリットです。
『認定理学療法士』を目指さない選択もアリ
ここまで『認定理学療法士』を取得するメリットについて解説してきましたが、こうした点をメリットと思わない方も当然いらっしゃると思います。
そもそも、日本理学療法士協会に入会することすらメリットを感じない方・実際に入会しない方もいるでしょう。
そんな方には『認定理学療法士』を薦めるつもりは全くありません。
「理学療法士協会には入会すべき」なんてきれいごとを言うつもりもありません。
こうした資格に限らず、労力や時間、お金をかける以上は、それに見合ったメリットがなければ、意味がないと考えるからです。
しかし、だからと言って勉強しない・研鑽しないというのはオススメしません。
それは、理学療法士として働く以上は、卒後に何も学んだり研鑽していないと、自分自身が苦労するからです。
少し厳しいことを言うと、理学療法士として関わる全ての人、具体的には同僚や先輩、患者さん・利用者さん、協働する他職種にまで迷惑をかけてしまうことになります。
『認定理学療法士』を目指さない、日本理学療法士協会に入会しない、といった方には、協会が提供する以外の方法で勉強・学習・研鑽を続けていくことが必要だと思います。
実際、今の世の中は情報が簡単に手に入るので、協会に入会しなくても最新の知見・情報は得られます。
協会に入会せず、『認定理学療法士』も目指さない研鑽の方法
例えば、リハノメを利用するのは一つの方法です。
日本理学療法士協会は年会費が10,000円、これに加えて各都道府県理学療法士会の年会費(県によって異なる)が加わります。
おおむね、2万円くらいと考えたら良いでしょう。
協会主催の勉強会や研修会に参加しようとすると、その都度参加費が必要となります。
『認定理学療法士』取得のためにはいくつもの研修や学会に参加しなければならないため、かなりの費用がかかるでしょう。
それに対し、リハノメは年間契約すると年間30,792円(2,566円/月)、2年契約すれば年間26,172円(2,181円/月)です。
▼リハノメについて詳しくはこちら▼
PT.OT.STのための総合オンラインセミナー『リハノメ』
また、自身の働く領域や専門とする分野に関してのみ知識を深めていこうと考えるのであれば、論文や書籍で勉強した方がずっと効率的で経済的でしょう。
『認定理学療法士』や『登録理学療法士』を誰もが目指す必要は全くありません。
しかし、ご自身と関わる人々の不利益とならないよう、最低限の勉強は継続していく必要があると考えています。
ぜひ、ご自身に合った勉強・学習・研鑽の形を見つけてください。
▼リハノメのレビュー記事はこちら▼
まとめ

以上、認定理学療法士を取得する2つのメリットについて書いてきました。
私の考える認定理学療法士取得のメリットは、次の2つでした。
私の考える取得のメリット
- なんだかすごそうに見える
- 一度取得した資格は手放したくなくなる
1つめのメリットは『ハロー効果』、2つめのメリットは『保有効果』という概念で説明できます。
心理学や行動経済学の概念を自身に応用することで、資格にメリットを持たせることが可能だと考えます。
また、このようなメリットを自身にとってのメリットと感じないのであれば、『認定理学療法士』など取得しないという選択ももちろん良いと思います。
ただ、理学療法士として働く以上、勉強や研鑽は必要だと考えます。
ご自身に合った研鑽のやり方を見つけていただければと思います。
関連書籍
本文でも引用させていただいた、ふろむださん著『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』です。
ハロー効果を最大限活用して、人生を生きやすくする方法が書かれています。
著者の経験に基づいて書かれ、しかも理論的な裏付けがなされ、さらに対話形式で書かれているという、恐ろしくわかりやすい・読みやすい本となっています。
著者のふろむださんは有名ブロガーなので、名前は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
「ハロー効果を活かせば、こんなこともできるのか」と目からウロコの一冊です。
こちらは、本文で紹介した『保有効果』のような、人の心理や行動傾向を分析して予測・制御しようとする行動経済学の書籍です。
こちらも非常に有名な書籍なので、目にしたことがある方は多いかもしれません。
少し古い本(2009年発刊)ですが、書かれている内容は古くないと思います。
この書籍の中でnudge(ナッジ)という概念が紹介されていますが、これは相手の行動を制御しようとする方にとっては必須の概念かと思います。
自分が知らず知らずのうちにとってしまう行動に関しても、その理由を考える上で参考になるかもしれません。