

リハビリの計画書を書くとき、目標をどのように設定して良いのかわかりません。
一応記載はしているのですが、日頃あまり気にしていない気がします。
計画書にしても、個人的な目標にしても、良い目標を立てるということが重要です。
今回は良い目標の立て方について書いていきます。

年始に今年一年の目標を立てる方は多いですよね。
また、リハ職のみなさんは、日頃からリハビリの目標を計画書に記載しているのではないでしょうか。
ところが、目標達成のために有効どころか、モチベーション低下につながってしまう目標設定をされている場合も少なくないようです。
この記事では、取り組みの成果を高めるための目標設定を行うポイントを紹介します。
結論から言うと、絶対に知っておく・考慮する必要があるのが、SMART(スマート)の法則です。
アナタに読んで欲しい
- 目標が上手く立てられない
- 目標を立てても、いつも達成できないで終わる
- 目標を設定するものの、いつの間にか忘れてしまう
- モチベーションが下がる気がして、目標は立てない方が良いと思っている
- 何のために目標を設定するのかわからない
なぜ目標を設定するのか
そもそも、人は何のために目標を設定する必要があるのでしょう?
「計画書に書く欄があって埋めないとならないから」
「年始にみんなが目標を立てているから」
こんな気持ちで目標を設定するのは非常にもったいない。
目標を設定するということは、なりたい未来の自分を想い描くということ。
そして、最終的な未来の自分に近づくための一歩を明確にするということ。
良い目標を立てて、そこに向かう一歩目を見定め、実際に踏み出す。
これでしか想い描く理想の自分には近づけないのです。
良い目標と悪い目標
では、良い目標と悪い目標というのは、具体的にどのようなものを指すのでしょう?
悪い目標から例を挙げて考えてみましょう。
悪い目標
悪い目標とは、例えば、
『充実した一年を過ごす』
『理学療法士として成長する』
『体力をつける』
といったようなものです。

え、何がいけないんですか?
そう思われた方は要注意です。
これらの例を良い目標に変換してみるので、比べてみてください。

良い目標
先ほど悪い目標として挙げた例を、良い目標に変換してみます。
変換の仕方は色々あると思いますが、例えば、
『家族と充実した一年を過ごすため、2回の家族旅行に行く』
『認定理学療法士を取得する』
『フルマラソンを完走する』
といった具合でしょうか。
まだまだ不十分な部分はあるのですが、最低限これくらいの目標設定はしておかないと、年始に立てた目標も2〜3ヶ月後には忘れ去られてしまいます。
悪い目標と良い目標を比べたときに、何が違うか分かりますか?
大きく違うのは、達成可能かどうかという点です。
悪い目標と良い目標の比較・解説
悪い目標と良い目標の何が違ったのでしょう?
大きく違う点は、悪い目標は達成したかどうかを評価・判断できない点、これに対し良い目標は達成できたかどうかを評価・判断できる点です。
悪い目標であった『充実した一年を過ごす』という目標を新年1月1日に立てたとします。
一年後、今年は充実した一年を過ごせたかどうか、判定できますか?
もちろん、気持ちの面で「充実した一年だった」と思えるかもしれませんが、それは結果であって、目標達成のために何かに取り組んだ結果なのでしょうか?
ここで私の言っている良い目標とは、自身のモチベーションを高め、目標達成に向けて踏み出す一歩目の方向が定まるものです。
目標があるから一歩目を踏み出せる
あなたは旅行に行くとき、最初に何を考えますか?
多くの場合、目的地を最初に考え、決めるのではないでしょうか。
そして、そこに至るまでの道筋を決めるはずです。
もちろん、行き当たりばったりの旅を楽しむ方もいるでしょう。
そのような場合であっても、北に行こうとか、○○線に乗ろうとか、大まかな進む方向は決めるはずです。
『人生は旅だ』と比喩されるように、人は目的地を決め、現在地から目的地に向かう道程があるから、一歩目を踏み出せるはずです。
目標設定というのも、最初の一歩をどちらに踏み出すのか、その方向付けのために必要なものなのです。
極端な話、目標がなければ人はあっちに行ったりこっちに行ったり、どっちつかずの人生を生きてしまうでしょう。
人生の目標を考えることのメリット
あなたに人生の目標はありますか?
そんなことを言われて「あります!」と言えてしまう方は、そもそもこの記事を読む必要がないし、読んでいないでしょう。
明確に決めることはなかなか難しいことですが、考えておくことにはメリットがあります。
長いスパンで達成していく目標は、途中で軌道修正しても問題ないですしね。
人生の目標を設定すると、次のようなメリット・良いことがあります。
- 毎年の目標設定が明確に立てやすくなる
- 何をすべきかわからないという状況に陥らない
- 一つ一つの行動が速くなる
- 人生を楽しめる
- 自身の成長に繋がる
人生最後の日に自分がどうなっているかを明確にイメージすることは難しいですが、それでもどうなっていたいかをイメージしてみましょう。
極端な例を挙げれば、
『一人で迎えたい』か『大切な人に囲まれて迎えたい』か。
『極貧生活の果ての最後の日』か『余裕や楽しみを持って生きた上での最後の日』か。
『仕事に忙殺されて生きた人生の最後の日』か『家族と共に生きた人生の最後の日』か。
これらは極端ではありますが、どのような人生、どのような最後を望みイメージするかは人それぞれでしょう。
そうしたイメージを持っていることによって、そこに向けてこの一年はどのような行動ができるのかを考え、今年一年の目標が定まることになります。
こうした過程を経て決定した今年の目標は、途中で忘れてしまったり挫折したりすることもなくなるでしょう。
人生最後の日から逆算して今日の行動を決める。そして達成する。
これこそが自分の成長に繋がり、それを実感し、日々のモチベーションを高めながら進んでいけるのではないでしょうか。
リハビリテーションの文脈では
話が人生の目標のような大きな話になってしまったので、一旦リハビリテーションの文脈で考えてみましょう。
リハ職の読者さんであれば、計画書に目標を書き入れることは日頃されていることと思います。
そんなとき、どのような目標を立てて記載していますか?
どんなことを考えて、目標を設定しているのでしょうか。
ここでも私は、その方の人生、そして人生最後の日をイメージして目標設定を行うことを提案したいと思います。
人生最後の日から逆算した短期目標
仮に、脳卒中後片麻痺となり、回復期病院に入院されている80代男性の方の計画書を作成するとしましょう。
多くの場合、長期目標は『自宅退院』、短期目標は『自立歩行の獲得』といったものでしょうか。
そんなとき、人生最後の日を考えてみると、たくさんの情報を考慮する必要が出てきます。
この方は、妻に先立たれ、二人の娘さんはそれぞれ結婚して遠方に居住されているため、独居である。 人当たりは良く、娘さんとの関係は良好、近所付き合いも積極的にされるタイプであった。 職業は工務店を経営しており、定年まで勤め上げた。 現在の住居は自分で建てた家で、思い入れが強い。 人生最後の日は、自分の建てた自宅で迎えたいと思っている。
このような情報が得られた場合、『自宅退院』も『自立歩行の獲得』も、少し異なる意味を持ってくるのではないでしょうか。
計画書の紙面には載らないかもしれませんが、長期目標は『思い入れのあるご自宅で最後の日を迎えるための自宅退院』になるし、短期目標も『思い入れのあるご自宅で最後の日まで生活するための自立歩行の獲得』となるわけです。
特に『自立歩行の獲得』に関しては、自宅で最後の日を迎えることが最優先事項になるため、屋内歩行に重点を置くことになるでしょう。
そうなれば、伝い歩きでも良いからとにかく安全に歩くことを目指すことになるかもしれません。
そして近隣住民やヘルパーなどのサービスを利用しながら、生活をしていくことになるかもしれません。
実際にはここに本人の思いや考え、ご家族の思いや考え、実際の身体機能との兼ね合いなどが入ってきます。
それらを総合的に考慮して、退院後の生活のデザイン、もしくは自宅退院の可否の判断などが行われていくことになるでしょう。
全てのケースでこのような思考が必要になるかと言えば、そうではないかもしれません。
若い整形外科疾患の方であれば、人生最後の日なんてイメージしづらいでしょうからね。
ただ、一つの考え方として持っておいても良いのではないかと思っています。
目標設定の大原則
では最後に、目標設定を行う上での大原則を紹介します。
これは年始の目標設定にも使えますし、リハビリの計画書を作成する上でも必要な考え方です。
その大原則とは、SMARTの原則と呼ばれるものです。
SMARTとは、5つの要素の頭文字を取って並べたものです。
これら5つの要素を押さえた目標を設定することで、達成が可能な良い目標にすることができるのです。
『S』Specific(具体的)
目標は具体的でなければならず、抽象的な目標は目標として機能しない悪い目標であると言えます。
例えば、「勉強を頑張る」というような目標ではなく、「参考書を○冊通読する」とかですね。
『M』Measurable(計量可能)
目標達成の成否を判断するためには、可能な限り数値化できるものを設定する必要があります。
例えば、「本をたくさん読む」ではなく、「本を○冊読む」というような目標にした方が、達成できているかどうかの判断ができますよね。
『A』Agreed upon(同意している)
その目標に向かうことに同意できているかどうかです。
自分で立てた目標であれば基本的に同意できているでしょうが、外部から促されて決めた目標の場合は注意が必要です。
同意していなければ、それに向けた努力などできるはずがありませんよね。
『R』Realistic(現実的)
そもそも目標は現実的なものでなければ、いつまで経っても達成できず、嫌になってしまいます。
思い出すのも嫌な目標になってしまえば、いつの間にか忘れ去られてしまうでしょう。
例えば、年収500万円の人が「今年中に年収1億円になる」とするくらいだったら、「今年中に年収600万円になる」にした方がまだ現実的で達成できそうですよね。
『T』Time-based(期限が明確)
期限が定まっていない目標では、それに取り組むことを今から始める必然性がなくなってしまいます。
「ダイエットは明日から」ってやつですね。
目標は達成する期限が決まるからこそ、その威力を発揮します。
「いつか海外旅行に行く」だといつまで経っても動き出せません。「今年の8月に海外旅行に行く」と決めることで、それに向けた貯金や計画に取りかかることができるでしょう。

そう言われてみると、自分の目標も患者さんに立てる目標も、あまり良い目標じゃなかったです。
この5つを明確にして目標を立てると、達成できたことが明確になってモチベーションも上がりますね!
目標は立てることが目的なのではなく、そこに向かうモチベーションを高めたり、そこまでの道筋を明確にするためのツールです。
途中で変わることも有り得るものなので、あまり構えず、自分や患者さんのリハビリを前に進めるための目標を考えてみてください。

まとめ

今回の記事では、良い目標の立て方について紹介してきました。
あなたが年始に立てた目標は、この記事で言う『良い目標』になっていたでしょうか?
リハ職のあなたが計画書に記載していた目標は、『悪い目標』になっていませんでしたか?
目標なんて途中で変わって問題ありません。
あまり重く考えたり構えたりせず、前に進むためのツールと考えて目標を立ててみてください。
リハ職・療法士向けに、キャリアの相談やカウンセリングのサービスを提供しています。
一人で目標設定することが難しい方も、メッセージでお話しながら目標を設定していけます。
目標設定でお悩みの方、お気軽にご相談ください。
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