

新人のうちは良い聴診器を持ってたって意味ないよね。
音の違いも聞き分けられないし。
とりあえず安物を買っておこう。
ちょっと待って!
新人・若手のうちから聴診器は少し良いものを使うべきです。
安物を使っていたら、いつまで経っても聞けるようになりません。

理学療法士が扱うことが多い道具のうち、聴診器はメジャーな方ではないでしょうか。
基本的には胸の音を聞くことが多いですが、血圧を測るときにも使いますよね。
職場によってはスタッフ間で共用する物品として置いてあるところもあったり、職場から支給されるところもあります。
私の経験では、病院勤務(回復期・一般病棟)のときはスタッフ間で共用のものが備品として置いてあり、現職の訪問看護ステーションでは各スタッフに1つずつ支給されています。
できることならば、理学療法士は自分の聴診器を持っているべきだと思います。
それも、少し良いものを。
それは、次のような理由からです。
若手が良い聴診器を使うべき理由
- 聴診器はピンキリ!用途に合ったタイプを使いたい
- 安い聴診器では聞こえない音がある
- 新人・若手のうちから音を聞き分ける経験を積むことが重要
ということで、『ちょっと良い聴診器』を使うべき理由を解説していきます。
この記事を書いた人

これまで2つの病院と現職の訪問看護ステーションに勤務した中で、聴診器の扱いはそれぞれ異なることを実感してきました。
回復期のある病院では、言語聴覚士はそれぞれ自分の聴診器を持ち歩いているものの、理学療法士と作業療法士は2つくらい置いてある共用の物品を使用していました。
その次に努めた病院(急性期)で理学療法士がそれぞれ自分の聴診器を持っていたことをきっかけに、各個人が少し良い聴診器を持っておく必要性を実感しました。
そんな経験を踏まえ、解説していきます。
聴診器なんてどれも同じ?
そもそも、聴診器なんてどれも同じだと思っていませんか?
きっとそれは、安い聴診器の音しか聞いたことがないからです。
聴診器は価格もスペックもピンキリです
例えば、すぐに見つかる聴診器の最安値を見てみましょう。
検索してみた限り、これが最安値です。
コスプレ用かな?とも思ったのですが、KENZ MEDICOさんは血圧計なんかも取り扱っているれっきとした医療機器メーカーなので、ちゃんとした聴診器かと思われます。
さすがにこのレベルのものを臨床で(しかも病院や施設の備品として)使用していることはないと思いますが、ちょっと不安になるくらいの安さですよね。
一方、ピンの方、最も高いものはどういったものがあるのでしょうか。
検索してみると、最安値と同じKENZ MEDICOさんの最上位機種が出てきました。
こちらは左右が独立した集音・伝音構造を持つステレオ聴診器と呼ばれるタイプです。
画像を見てもわかるように、チェストピースに金メッキが施されています。
画像では見えていませんが、耳管も金メッキです。
実際に聞いたことがないので音はわからないのですが、ピンとキリとではかなりの違いがあると予想できますね。
ちなみに、現在は製造中止されてしまっているのですが、以前はリットマンから電子聴診器というものが販売されていました。
メーカー公式ホームページでは『通常のリットマン聴診器の24倍まで音量増幅』と謳われている代物です。
実際にお持ちの医師に聞かせていただいたことがありますが、確かに次元の違う音がしました。
しかし、理学療法士にとっては完全にオーバースペックだと思われます。
安い聴診器では聞こえない音も
これは実際に聞き比べてみないとわからないことなのですが、やはり聴診器で聞こえる音はそのスペックによってハッキリと異なります。
言葉で表現するのが非常に難しいのですが、低価格帯の聴診器では「遠くで聞こえている」ような音が、中〜高価格帯の聴診器では「耳元で鳴っているように聞こえる」というような印象です。
一言で言えば、とにかく聞こえやすい、小さな(はずの)呼吸音も、しっかりと拾って聞かせてくれるのが『ちょっと良い聴診器』です。
聴診器には種類があります
聴診器のチェストピース(聴診部位に当てる部分)には2種類あり、『ベル型』と『ダイアフラム型』があります。
この『ベル型』と『ダイアフラム型』がリバーシブルの一体型となっているものと、『ダイアフラム型』のみのものとがあります。

画像では、左が『ダイアフラム型』のみのタイプ、右が『ベル型』と『ダイアフラム型』が一体となっているタイプです。
ベル型が付いているものはリバーシブルの一体型となったものが多いですね。
用途で言えば、『ダイアフラム型』は広い範囲の音を拾いやすく、当てる強さによっても聞こえる音の周波数が変わるとされています。
この特徴は、呼吸音を聞くときに適していると言えますね。
一方の『ベル型』は、狭い範囲の音を拾うのに適しているタイプです。
一点集中で聞く必要のある心音の聴取などに適しているとされます。
ちなみに、血圧を測るときには、形状がスリムな『ダイアフラム型』の片面タイプを使用した方が良いです。
カフにそのまま巻き込むことが容易なので。
用途やスタイルに合った聴診器を選びましょう
このように、価格帯や形状によって、聴診器は色々なタイプのものに分けられます。
では、理学療法士にとって一番良い聴診器はどのようなものなのでしょうか?
理学療法士が聴診器を使う場面を挙げてみましょう。
理学療法士が聴診器を使う場面
- 血圧測定
- 呼吸音の聴取
医師であればこれに加えて心音の聴取なんかもすると思いますが、理学療法士で心音を聴取する頻度はあまりないのではないでしょうか。
ということで、この『血圧測定』と『呼吸音の聴取』を主に行うであろう理学療法士に適した聴診器を選べば良いことになります。
理学療法士に最適な聴診器はコレ
ということで、私の選ぶ理学療法士に最適な聴診器は、こちらです。
もちろん、私も使っています(笑)
購入する場所にもよりますが、3万円以下で購入できる中価格帯のモデル。
ダイアフラム型(片面タイプ)なので、血圧測定にも使いやすく、呼吸音の聞きやすさはバッチリです。
かれこれ10年近く愛用していますが、職場支給のものに戻れる気がしません。
また買い替えるときには、同じものを購入すると思います。
どうしてもベル型が良い!という方以外は、この『リットマン マスターカーディオロジー』一択で良いのではないかというくらいオススメです。
若手は良い聴診器を持っていても意味がない?
ここまで説明して、少し良い聴診器を薦めると、こんな声が聞こえてきそうです。

そんな良い聴診器を使っても、そもそも呼吸音の違いがわからないんだから意味ないんじゃないかな。
やっぱり新人・若手のうちは安いもので良いよ。
いえいえ、違います。
わからないからこそ、良い聴診器で聞く経験が大切なのです。
ここからは、若いうちからちょっと良い聴診器で聴診を行うことが必要な理由、そのメリットを解説していきます。
若手だからこそ音を聞き分ける経験を
ベテラン理学療法士、聴診器を使って呼吸音の違いから異常を見つけることができる理学療法士は、新人・若手の頃から聞き分けることができたのでしょうか?
もちろん違いますよね。
たくさんの音を聞いて、聞こえなくても聞こうとして、その違いを聞き分けるという経験を積んだから聞き分けることができるようになったのです。
そして、聞き分けることのできるスペックの聴診器で聞く練習をしなければ、どう頑張ったって聞き分けることができません。
そうすると、いつまで経っても音の違いを聞き分けることができるようにはならないのです。
私も職場で共用の聴診器を使っていた頃は、正直聞き分けようなんて思っていませんでした。
自分のちょっと良い聴診器を購入してから、聞き分けることができるとわかり、そこからちゃんと聞く・聞こうとするようになったという経緯もあります。
なので、若手だからこそ音の違いを聞き分ける経験をすべきなのです。
まとめ
以上、理学療法士がちょっと良い聴診器を使うべき理由について解説してきました。
若手・新人のうちは「いきなり良いものを使っても仕方ない」と考えて、安いものを選んでしまいそうです。
しかし、やはり良いものは良い。
良い聴診器を選べば、より多くの音を聞き分ける経験を積み、学ぶことができます。
特に職場で共用のものを使用している場合は、是非、自分専用の聴診器のご購入を検討してください。
購入するお店によっては名前の刻印を入れられたりして、なんだか嬉しくなりますよ(笑)
色々なタイプがある聴診器、あなたはどんなものを選びますか?